この記事は昔書いた記事です。こちらにも転記しておきますー。

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秋の味覚といえばなんといっても秋刀魚。秋はサンマだ。サンマこそ秋だ。ああ、まろやかでコクがある脂の乗ったサンマさん・・・

秋の味覚といえばなんといっても秋刀魚。秋はサンマだ。サンマこそ秋だ。ああ、まろやかでコクがある脂の乗ったサンマさん・・・こんなに大好きな”サンマ”なのに釣ったことがないことに気づく。

スーパーなどで手軽に手に入ってしまうため、自ら苦労して入手しようと思ったことがなかったのだ。

秋の味覚といえばなんといっても秋刀魚

 

「秋のサンマを自ら釣って食してこそ、ホントのサンマ好き」

 

釣れないか調べてみることにした。

サンマは回遊魚で神出鬼没な上、沖の漁業網などでしかゲットできず、陸に近い釣り人のテリトリーにはめった現れないようである。

とはいえ、時々漁港に迷い込んで来ることがあり、今年は神戸や和歌山の漁港で釣れているようだ。

案外ありえない話ではない。それにサンマだってたまには釣られてみたいだろう。真のサンマ好きを追求するオレに。。

サンマが釣ってもらいたがっているポイントはどうやら、大海に対し尖がってる岬が多いようだ。

関東で一番とがっている岬。それは間違いなく「銚子港」のことではなかろうか。

年間水揚量全国第1位(2006年)を誇る日本屈指の漁港で、サンマの水揚げもかなりの量だ。(全国4位:2002年)

条件ばっちり!

たしか落語で有名な「目黒のさんま」でお殿様に食べさせたサンマも銚子港で水揚げされたものではなかったか!?

銚子に”サンマ釣り”に出かけることにした。

 

いきなり寄り道。犬吠埼へ

 

今回はサンマ大好き、大物に目が無いビッグフィッシャーのヤマダくんも同行してくれた。
(サンマ釣り前日はなんとマグロ釣りに行っていたらしい!)

ヤマダです

天気もいいし何だか日帰りの旅っぽい。ウキウキして思わず銚子の手前、犬吠崎に寄り道してしまった。

長い一日になることも知らずに・・・。

二人でアイスとか食べちゃった。

どうして犬にとりついたんだろう。

 

「とがっている岬」こと銚子港へ

銚子港の釣り場に着くと、既に多くの釣り人が陣取っていた。さっそく情報収集である。
釣り人達のなかでもひときわ目立っていた老釣り師達に声をかけてみることにした。

「釣れてますか?」

とたずねてみる。

この掛け言葉は、釣り人が円満に情報収集をするための挨拶みたいなものである。

ひときわ目立つ一団。老師と呼ばせてもらおう。

 

「ここでサンマ釣れますか?」

 

一瞬間があった。あきらかに嘲笑気味である。

「サンマならもっと北の北海道あたりにいったら釣れるんじゃないか(笑)」

 

ちゃんと答えてくれた。

それなりに誠意ある回答だ。さすがに北海道は遠いが確かにサンマといえば北だ。説得力がある。

北に行こう。

老師たちに丁寧にお礼をいい、北の釣りスポットへ照準をあわせることにした。

 

銚子港の北に移動

銚子港よりやや北側のスポットでサビキでアジを狙っている二人組に出会った。

「今日はまったく釣れない!」と怒り気味にぼやいている。ちょっと怖かったが重要な情報収集である。勇気をだして聞いてみることにした。

 

「ここでサンマ釣れますか?」

 

一瞬間があった。こちらもあきらかに嘲笑気味である。

「今日ここで釣れるのはボラだけだよ。あはは」

なんとなく場が和んだ。なんか良いことをしたようで嬉しいです。

 

30キロ北上し、鹿島港へ

銚子港より北へ30キロあたり北に移動したところに鹿島港があった。移動前、「30キロもあるのか!」と思ったがさほど時間はかからなかった。道が空いていて移動がとてもラクだ。

ここも釣り人がたくさんいた。その中に釣り宿風に自家用車を改造している夫婦をみつけた。

聞くと昨日から泊まりで釣りにきているらしい。釣ったアジやイワシをその場で干物に加工していた。とても美味しそうだ。

その干物を褒めながら、さりげなく聞いてみた。

釣り宿風に自家用車を改造してました。いいなあ。

「で、サンマは釣れたんですか?」

ここでもやはり間があった。

「サンマ!?」「私は釣ってないわ。ちょっと主人に聞いてくる」

なんとも丁寧にご主人にサンマが釣れたか確認してくれた。

奥さんがご主人に笑われていた。どうやらサンマは釣れないという説明を受けているようだ。

なんとなく申し訳ない気がしたが夫婦の間に話題のひとつも提供できたと考えるとそんなに悪い気もしない。

戻った奥さん
「ゴメンねえ。サンマは釣れてないわ。そのかわりこんなのは沢山つれるけど」といって魚籠の中を見せてくれた。

弓角で釣ったそうです。いきなり現れたイナダにビックリする。

「イナダだ。。かなり大きい。。しかも3匹も」ヤマダくんが思わずつぶやく。

ヤマダくんの中に熱く強い情熱がわきあがる!

彼はヒキが強い魚釣りやビックフィッシングといった闘争系の釣りに血湧き肉躍るのである。

いつも穏やかな表情の彼の眉間に深い皺が寄った!間違いなく狩人の目になっている。

 

「ここでイナダを釣りたい!」
「いやダメです」

目からビームがでてる勢いを感じる。

 

さらに北へ向かう

どうにか、今日は「サンマを釣りにきたのだ!」と説得し、突如燃え上がった彼の衝動をなだめつけた。

彼が後ろ髪を引かれないうちに調査ポイントをさらに北にずらした。

ここにもたくさんの釣り人が。

テトラポットの近くで、目の前でギュンギュン竿をひるがえしている釣り人がいた。

よほどの腕前らしく、メジナをガンガン釣り上げていた。とても楽しそうである。

手のひらサイズの魚を釣るのはオレの至上の喜びである。

その釣りが今、目の前で繰り広げられているのだ!!

 

とても楽しそうだ!

達人「一緒にメジナ釣りません?」

 

おおお!なんていい人!

達人は一緒に釣りをしようと誘ってくれたのである!

「オレもあの人の隣でメジナを釣りたい!」持ってきたフカセ釣りの仕掛けに思わず手が伸びる。

しかし目線の先にはヤマダくんがいた。

「オレ達はサンマを追いかけないとダメです。。」

もしかするとオレ達はかなり厳しく辛い釣り行脚を実践しているのではないか。

テトラ手前で釣れていたメジナ。30匹ほど釣れていた。

 

さらに北上、鹿島灘から大洗港へ

気を引き締めなおし、次なるポイント鹿島灘へ。気分と同様、天気も崩れてきた。

薄暗い空

先ほどまで晴天だったこの釣り行脚だが、突然曇り始めてきた。

風もかなり強い。

沈みがちな気分で、天候が崩れて撤退中の釣り人に聞く。

 

「ここでサンマ釣れますか?」

 

軽く笑われた。

「サンマは外洋の回遊魚だからこんな陸からの釣りは難しいよ」と丁寧に教えてくれた。

なんだかんだ釣り人はみんな親切である。

カーナビを見ながら次なるポイントを探していると大洗のほうに漁港があるのが確認できた。

大洗港までは、またしても30キロ以上あった。

この時点で、もはや「釣り」というより「ドライブ」もしくは「サンマ行脚」という感覚となってしまっていたが、まだまだ北上を続ける。

 

大洗マリーナに人だかり。なんとカジキマグロ。もちろんヤマダくん興奮。

北海道苫小牧行きのフェリー。老師の言葉を思い出す。乗りませんが。

 

那珂湊漁港でとうとうサンマに遭遇!?

走行距離は300キロ越。たどりついた那珂港はあちらこちらで竿がしなっている!

 

大洗港から北上し海門橋をわたると有名な「那珂湊おさかな市場」がある。

もうこんなところまできたのか。。

海門橋の下で沢山の釣り人が投げ仕掛けを投入していた。

「なにを釣っているのかなあ」と思いながら車内より眺めているとなにかがバンバン釣れていて気勢がいい。

そしてこんな声が聞こえるではないか。

 

「やっぱりサンマだよ。サンマがいいよぉ~。」

え!サンマ!!

 

恥ずかしい思いをしながら一日中聞きまわった「サンマ」の響き。

ヤマダくんと一日中探し回った「サンマ」の響き。

これが釣り人達から発せられている!(ホントです)

こっちの方から「サンマ」と聞こえました。

 

急いでクルマを停め、近くの釣り人に聞いてみた。

今日一日聞きまわった苦い思い出の言葉。でも今度こそ自信をもって発することができるこの言葉。

 

「ここでサンマ釣れますか?」

 

一瞬間があった。そして返ってきた言葉はこうだった。

「餌にしてるんです。サンマ。切り身にして使うとよく釣れるんですよ。スズキが。」

がーん。 がーん。 がーん。

やっぱりそんなに話が上手くいくわけないと思った。

一日追いかけてきたサンマだが、突然思いついてつれる魚ではなかったようだ。

突然思いたったサンマ釣り企画だったが獲物はゲットできなかった。

とはいえ、釣り好きな二人が今日一日竿もださずにサンマを追い求めたことは称賛に値するのではないか!

オレたちってスゴイ。

なんてことを言って自分を慰めてはみるものの、そのまま帰るのはやっぱりシャクだからスズキ釣りをやってみることにした。

近くで購入した釣具屋のオヤジお手製の仕掛け。
「ばっちり釣れるよ!」とかいっていた。
ダンボールにマジックで書かれたオヤジ特製の仕掛け。手作り感がほとばしる。

急いで仕掛け投入する。オレとヤマダくん。

待てども2人の竿には一切あたりがなく、どっぷり日が暮れてしまった。

時間はすでに夜の7時。

夜釣り用の道具をもってきてなかったので真っ暗でなんにもできない状態。

「目黒のさんまを普通に食べにいったほうがよかったかなあ」

なんて考えながら、あきらめて帰ることに終わってみれば、東京からの行き帰りあわせて400キロもの釣り行脚ドライブだったわけだ。

 

漁業網で捕ってくれればいいです。